【薬膳コラム】第3回 五臓・六腑の陰陽五行説との関わり

人気料理家によるコラムをフレンドクック公式ブログでご紹介します。台湾や香港といったアジア各地への駐在経験から中医学などを学び、現在は薬膳アドバイザーとして料理サロンを開く齊藤嘉子さんに、「薬膳の智恵を活かし豊かな食生活」をテーマとし全6回の連載コラムをご寄稿いただきます。


こんにちは。第一回第二回では、中医学のベースとなる陰陽・五行説について詳しくお話しを進めてまいりました。

読者の方々からお声を頂戴しておりますので、いくつかご紹介させていただきますね。

「コラムを読む前までは、薬膳というと敷居が高いイメージがありました」

「体調により気を使うようになったので、薬膳をうまく取り入れられたらいいなと思います」

「薬膳料理って、特別な食材を使っているのかと思っていました」

私は、薬膳が身近にあることに読者の皆さんがお気づきになられたことを、筆者としてとても嬉しく思います。

コラムのテーマでもある、心身ともに健康に暮らせるよう薬膳の智恵を活かし食卓を豊かにしていただきたい、という私の願いは、コロナ禍の今だからこそより強くなりました。

さあ、第三回は、陰陽・五行説を人のからだの生理機能に応用した視点から探っていきます。


五臓・六腑とは

「五臓六腑に染み渡る」、「五臓六腑をお大事に」と言ったり聞いたりしたことがある方も少なくないのではないでしょうか。

中医学では、五臓・六腑とは、その性質と機能から、中身が満ちた器官である「肝」・「心」・「脾」・「肺」・「腎」を五臓、なかが空いていて空間がある気管の「胆」・「小腸」・「胃」・「大腸」・「膀胱」・「三焦」を六腑としています。

「あれ?おかしいなぁ。膵臓がないなぁ」。

これは、私が香港で中医学を学んだ当時の疑問でしたが、同じように不思議に思っていらっしゃる方もいらっしゃることでしょう。

膵臓の膵の字は、漢字ではなく和字(国字)である、という成り立ちを知れば、中医学に膵臓が存在しないのも納得できますよね。

「脾」は西洋医学の脾臓ではないのです。五臓の「脾」は消化吸収の働きをするので、消化酵素を分泌する膵臓は脾に含まれます。

内臓を物質とみなす西洋医学に対し、臓腑を生理機能面から捉えるのが中医学です。

また、中医学が症状や全身の状態を総合的に判断してからだのバランスを取るように治療法を探っていくことからも、病名を確定し、その病気を局所的に治療する西洋医学とは根本的に異なることがよくわかりますね。


五臓・六腑の性質と機能

なかが詰まった形態の「肝・心・脾・肺・腎」の五臓は、生命活動と精神活動の中心であり、「気・血・津液」の生成と循環、貯蔵器官でもあります。

一方、「胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦」の六腑は、中空気管で、飲食物の消化、吸収、排泄に関与しています。

六腑は水穀精微(飲食物から得られる栄養物質)で充たされますが、五臓とは異なり、気血津液で満たされることはありません。

ところで、「三焦ってなんだろう」と疑問に思った方も多いのではないかしら。

実は、私も隠さず、そのひとりでした。

三焦は実際の臓器ではありません。

水液や気・血をからだに行き渡らせ、不要物を尿や便として排泄させる通り道の働きをする腑です。


陰陽と五臓・六腑

陰陽を五臓・六腑に当てはめると、陰が裏の五臓、陽が表の六腑になります。

五臓・六腑のそれぞれは表裏の関係にあり、切り離すことができません。

興味深い諺をひとつご紹介します。

仲のよい間柄や密接で深い関係を「肝胆相照らす」仲と言いますね。

この肝胆は、五臓の肝と六腑の胆のことであり、どちらも生命維持に欠かせない重要な器官であることから転じ、心底、真心という喩えになったというわけです。


五行と五臓・六腑

五行の5つの概念である「木」、「火」、「土」、「金」、「水」は、それぞれ、「肝・胆」、「心・小腸」、「脾・胃」、「肺・大腸」、「腎・膀胱」に充当します。

また、五行に当てはめられた五臓・六腑にもそれぞれの機能を促進させる相生の関係や、逆に、それぞれの機能を抑制させる相剋の関係があります。

下に図を載せました。ご覧くださいね。

前回お話しさせていただいた、「木」が燃えて「火」が誕生する相生関係「木生火」を、図を参照しながら思い出してください。

これが、ひとのからだにおいては「肝生心」となるのは、「肝」が血液を貯蔵するという役目を果たすことで、五臓・六腑の大主である「心」は血液を循環させることができる、という解釈から成り立っています。

「水」が燃え盛る「火」を消す「水剋火」という相剋関係は、五臓では、「腎」は「心」を抑えるという「腎剋心」になります。

心の陽気「火」は、腎の陰「水」によって抑えられ均衡を保っているというわけです。

前回、五行に自然界の諸々を対応させた分類表を掲載いたしました。 今回は、ひとのからだに対応させてお示しいたします。

五行の分類表(人体)

五行
五臓
五腑 小腸 大腸 膀胱
五官
五体 皮毛
五志 悲・憂 恐・驚

西洋医学の指す個々の内臓とは違い、五臓・六腑は各臓腑が連携し、臓と臓、もしくは、臓と腑の協力関係のもと、物質代謝や精神活動を含めた生理機能を発揮しているのです。

五行説では、相生の関係、相剋の関係を共に均衡に保つことが重要視され、ゆくゆくは、心身の健康につながるというわけです。


五臓・六腑の薬膳への応用

中医学では、ひとの健康は五臓・六腑の機能バランスが取れた状態を指します。 それぞれの食材が持つ特性を知って上手く取り入れ、五臓・六腑をはじめとするひとのからだ本来の機能を整え、心身のバランスを保つよう献立を立てるのが薬膳です。


第四回以降は、主に五臓・六腑で生成・代謝され生命活動を維持する「気・血・津液」についてのお話や、五臓・六腑の働きを助ける食材のご紹介をさせていただきます。

今回、ほんの少しですが、中医学と西洋医学との相違点をお話しさせていただきました。

残念ながら、中医学は西洋医学のような即効性は期待できませんが、薬膳はゆっくりながらも私たちを健康に導いてくれます。


今回のコラムが、薬膳を身近に感じ始めた皆さんの毎回の食卓に少しでもお役に立つことを願っています。

次回もお楽しみに!

<薬膳の智恵を活かし豊かな食生活>

第1回 中医学の陰陽との関わり
第2回 中医学の五行との関わり
第3回 五臓・六腑の陰陽、五行説との関わり
第4回 生命活動の維持に欠かせない気血津液(しんえき)

齊藤嘉子 (さいとう・よしこ)

生後間もない娘を抱え台湾でスタートしたアジア駐在生活は、香港、中国、ベトナムへと次々に拠点を変え15年近くに及ぶ。現地の人々や飲食文化に魅了され、子育ての合間を縫い、中国茶藝や現地の家庭料理、中医学、普通語を学んだ経験から、ベトナム駐在中に自宅サロンをスタート。

日本帰国後は夫のライフワークであるアジアビジネスの一環として、自らも東京の自宅サロンで、健康と美をモットーに、中国大陸・台湾から調達した中国茶や、薬膳を取り入れた料理を紹介。ダイニングルームの円卓での参加者との会話は、トリビアから豆知識まで飲食にまつわる面白い雑学で盛り上がると好評。また、乳がんサバイバーであり、現在、医療機関でピアサポート活動に参画している。
日本中医食養学会認定薬膳アドバイザー、国際食学協会認定食学アドバイザー認定講師、食品衛生責任者

編集・フレンドクック